「彫刻の壊れ」
彫刻が世界と繋がることができるのは、彫刻が壊れた時である。
打ち倒された権力者の銅像が、閉鎖された美術館に立つ誰にも見られることのない仏像が、
日常に流れ出し、風景の一部となる。
あるいは、壁際に立つ彫像の背面、設置や撤去の際に偶然見かけた彫刻の裏側、底面、
それらは図らずも彫刻が求め続けてきたリアル/日常である。
望まないかたちで到達してしまったリアル/日常を、彫刻は受け入れることができるだろうか。
「彫刻の壊れ」が、「彫刻の裏側」が、
どこにも属さない宙ぶらりんの彫刻なるものに重力を与え、この世界のどこかに着地させる。
1. 切断された木彫をアクリル板の積層によって2つに複製する。
2. 複製された2つの彫刻、その正面を隠す。
3. 既製の彫刻の正面を隠し、裏側だけを見せる。
4. 鑑賞者の身体に直接触れ、跡を残す彫刻。
2020年10月20日 袴田京太朗